液タブ Cintiq 13HD を1年間使ってみた感想

この記事は、創作ブログリレー 2015 の1日目の記事です。

昨年のちょうど今頃になりますが、液晶ペンタブレット(液タブ)の Cintiq 13HD を導入しました。

約1年間、主に趣味でのお絵描き用途として使ってみて、良いところ、気になるところがわかってきたので、このタイミングでそれをまとめてみようと思います。 「液タブって実際どうなん?」と疑問に思っている方の参考になれば幸いです。

はじめに結論から言ってしまうと、今までアナログで描いていて、(液タブでない)ペンタブに慣れなかった人にはむしろオススメのデバイスです。

液タブに辿りつくまで

まず、ぼくが液タブを導入した経緯についてお話します。

ぼくは液タブを導入する前はほとんどアナログで絵を描いていて、たまーにデジタルで着色するときだけ FAVO1 というペンタブ(板タブ)を使っていました。 デジタルでの着色は便利なのですが、ペンタブでは自分のイメージと実際の描画との間に「ズレ」があると感じていて、そこがネックでした。 一時はアナログでの着色も試みましたが、なかなか自分に合う画材が見つからず苦戦していました。

やはり色はデジタルで塗りたい、しかしペンタブでは「ズレ」が気になる。 ならば、画面に直接描ける液タブであれば「ズレ」はなくなるはずだ、ということで、液タブの導入を検討するようになりました。

液タブはいくつかラインナップがありますが、予算的に Cintiq 13HD にしか手が出なかったので、最終的に 13HD を購入することに決めました。

Cintiq 13HD

Cintiq 13HD は、Wacom の液タブのラインナップの中では一番小さいモデルです。 画面の大きさはその名の通り約13インチで、A4の紙にすっぽり収まってしまうくらいの領域しかありません。 最初に本体を見た時の印象は「画面ちっさ!!!」でした。今でも時々思います2

さて、ここから本題である「ぼくが感じた Cintiq 13HD の良いところ、気になるところ」に入っていきましょう。

良いところ

1. 倍率や角度のズレがない

13HD というより液タブ全般に言えることですが、ぼくが液タブの一番の利点だと感じたのがこれです。

普通のペンタブでは、画面の大きさとペンタブ本体の大きさが一致することはほとんどありません。 例えばペンタブ上で10cmの線を引いたとしても、それが画面上で10cmの線になるとは限りません。 また、画面に対してペンタブを正確に並行に置かないと、角度にもズレが生まれることになります。 極端な話、画面に対してペンタブが45°ズレていれば、垂直な線を引いても画面上では45°の角度の線が引かれることになってしまいます。

画面に対して垂直に線を引いても、画面上では斜めの線になってしまう。

これがおそらく、ぼくがペンタブに対して感じていた「ズレ」の正体です。 慣れればこのズレを「ズレ」と思わなくなるのかもしれませんが、もともとがアナログで描いていたぼくにはどうしても慣れることができませんでした。

液タブでは、描いている部分と表示される部分は同じになります。というか、そのように作られて(または調整されて)います。 実際にペンで描いた長さ、角度がほぼそのまま画面上に反映されます。 なんとも当たり前のように聞こえますが、これをデジタルで実現できるのは液タブしかないというのが現状です。 この「当たり前」を実現できることが、液タブの最大の利点です。

2. 持ち運びしやすい

13HD はコンパクトかつ薄型なので、「液タブを外に持っていく」ということができてしまいます。すごい時代です。 家では集中できないと思った時や、作業会の時など、意外と外に持って行きたい機会はあるものです。

ただし、13HD は結局外付けディスプレイなので、PC本体は別で要ります。 「持ち運ぶ」ということをメインに考えるなら、Cintiq Companion などのほうが目的に合致していると思います。

13HD は、たまに持ち運ぶ程度の用途ならピッタリだと思います。

3. 比較的お手頃

利点の3つ目は、液タブとしては比較的安く手に入りやすいところです。

先ほど予算的に 13HD にしか手が出なかったと言いましたが、ぼくがこれを買った時の相場は8万円程度でした。 液タブが10万円を切る値段で手に入るようになったのはなかなか画期的だと思います。 しかも、(サイズは小さいにしても)スペックが他の Cintiq と比べて劣っているというわけでもなく、コストパフォーマンスが良い製品だと思います。

逆に、値段相応だと思うのはやはりサイズです。これは次節で詳しく話します。

気になるところ

1. やっぱり画面は小さい

13HD で一番気になるのは画面サイズです。

いや、画面サイズが上がれば値段もそれなりに上がるのはわかっているのですが、それでももうひと回り大きいサイズだとよかったなぁと感じます(かといって22インチは大きすぎる……)。

キャンバスサイズとポストカードの比較

この写真は、13HD で CLIP STUDIO PAINT の新規キャンバス(A4縦, 600dpi)を表示させたところです。 比較のためにポストカードを置いていますが、ほぼ同じくらいですね。

このようにキャンバス全体を表示しようとしたりすると、やはり 13HD では小さいです。そこは1年間使った今でも感じます。

2. 視差がやや気になる

13HD の表面には、液晶面を保護するためにガラスが貼ってあります。 このガラスの厚み分だけ、ペンの先と表示される部分とに差ができてしまいます。 これはよく「視差」と呼ばれます。

この視差のせいで、「完全に紙に描いている感覚」ではなくなります。 結局、正確に線を引きたければペン先ではなく、カーソルを注視しながら描くということをやっています。 これは、液タブでない普通のペンタブでやっていることとほぼ一緒なので、この点は残念です。 それでも、倍率と角度は維持されるので、まぁ許容範囲かなと感じます。

3. つるつる滑る→ペン先を変えてやや改善

13HD の表面はつるつるしています。 また、標準でついてくるペンのペン先(芯)も、プラスチック製でつるつるします。 つるつるの表面につるつるのペン先で描くととてもつるつるします。 ぼくはどちらかというと抵抗があるほうが描きやすいので、最初はこのつるつるに非常に困りました。

実は、13HD に限らず Wacom のペンタブのペン先は替えられるようになっていて、種類も何種類かあります。 ぼくはいくつかペン先を試してみて、最終的には有志の方が作っているアルミ芯に行き着きました。 この芯は先端に加工がしてあって、それが液タブの表面に引っかかって抵抗になります3。 紙に描いてるように、とまではいきませんが、この芯のおかげである程度描きやすくなりました。

まとめ

ここまでいろいろと書いてきましたが、細かいところで不満に感じることもあるものの、総じて Cintiq 13HD は良いデバイスだと感じます。

もともとアナログで描いている人で、ペンタブに違和感があって慣れない(けどデジタルで描きたい)という人は、導入して損はないと思います。 あとはその違和感を解消することにいくら投資できるかということだと思いますが、13HD は比較的お手頃かつコストパフォーマンスもいいのでオススメです。

ただし、画面サイズが小さいのは注意したほうがいいと思います。 予算が許すなら、もっと大きいサイズを検討してもいいかもしれません。

参考になれば幸いです。


創作ブログリレー 2015」は明日以降もまだまだ続きます!

参加者も引き続き募集中ですよ。 ぼくは初日で気合を入れすぎてこんな長文になってしまいましたが、もっとライトなもので構わないのでお気軽に参加してください! 追記: おかげさまで全枠埋まりました!

明日は @orgelgarden さんの担当です。おたのしみに!

Footnotes

  1. これも Wacom 製で、Bamboo より更に前の世代のペンタブです。今の人はもしかしたら知らないかも……

  2. Cintiq のラインナップではこれより大きいのはいきなり22インチになってしまいます。15〜17インチくらいのがあればいいのに。

  3. それなりに削られてしまうようで、結構傷がついてしまいます。保護シート必須です。

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